ハードディスク内部構造
ハードディスクの内部は、写真1のような構造になっています。その内部は非常に精密な構造になっており、ホコリやゴミなどの侵入を嫌うため気密構造となっています。従って普通の空間でハードディスクを開封することは厳禁です。(この写真はクリーンルーム内で開封を行っています)
データは中央部にあるプラッター(磁気ディスク)に記録されます。プラッターは1枚の場合もありますが複数の場合もあります。一般的には、2.5インチハードディスクの場合で1~3枚、3.5インチハードディスクの場合で1~4枚程度です。さらに各プラッターの両面に磁気ヘッドが取り付けられた「アクチュエータ」が取り付けられています。アクチュエータは固定軸(アクチュエータ軸)を中心に円弧を描くようにスイングでき、プラッター上を内周から外周まで移動できる構造になっています。
アクチュエータの付け根にはボイスコイルモーターと呼ばれるコイルが取り付けられており、ケースに取り付けられたマグネットとの電磁作用によってアクチュエータを動かす仕組みになっています。また、非動作時にアクチュエータを動かないように固定するロック機構などで構成されています。
ハードディスクのうら面にはプリント基板が取り付けられています。(写真2)この基板上にはハードディスクコントローラと呼ばれるマイクロコントローラチップが搭載されており、ここで磁気ディスクのすべてを制御しています。現在のハードディスクのほとんどは、スマートフォンやタブレットなどでおなじみのARMコアプロセッサを内蔵したコントローラが搭載されています。つまりハードディスクはそれ単体で情報機器としての頭脳を備えています。基板上にはこのほかに、読み出したデータを一時的に蓄えたり、書き込み前のデータを保管するためのキャッシュメモリが搭載されています。またプラッターを回転させるスピンドルモーターや、アクチュエータを駆動するボイスコイルモーターなどを制御するモータードライバを搭載したモデルもあります。
ハードディスクのキーデバイス、アクチュエータ
ハードディスクにとってもっとも重要なデバイスの1つが、アクチュエータ先端部に取り付けられた磁気ヘッドです。(写真3)ハードディスクのハードウェア的なトラブル(物理損傷)の多くが、この部分とプラッター(磁気ディスク)との不具合によって発生します。それだけに非常にデリケートなデバイスだと言えるでしょう。
アクチュエータの先端部分を確認すると、なにか小さなものが取り付けられていることがわかります。(写真4)これが磁気ヘッドとそれを構成するスライダーと呼ばれる部品です。スライダーはプラッター上をほんのわずかに浮上しながら、プラッター上の磁気データを読み書きする重要な部分です。肉眼で見えるのはこれが限界ですが、さらに拡大してみると、向かい合った2つのスライダーが確認できます。(写真5)この写真の例では、アクチュエータに4個のヘッドが取り付けられており、2枚のプラッターの両面、すなわちおもて面とうら面の両方に磁気データを記録します。1枚のプラッターに記録できるデータ容量は各時代の技術力で決まっているため、同世代の製品で比べた場合、大容量のハードディスクほど多くのプラッターとヘッドを備えています。
この微細な磁気ヘッドから読み出された情報は、アクチュエータのベース部に取り付けられたプリアンプ(写真6)に送り込まれます。最近のプリアンプは2mm角前後の非常に小さなチップになっています。磁気ヘッドの近くにプリアンプを設置することで、ハードディスクコントローラに至る伝送経路でのノイズの混入を低減し、より安定した読み書きを行うことが狙いです。
プラッターを回転させるためのスピンドルモーターは、プラッター中心部に組み込まれています。(写真7)モーター本体はプラッター取り付けベースと一体化しており、またアルミダイキャスト製のシャーシに埋め込まれているため、プラッターを取り外さずにモーターを交換・修理することはできません。スピンドルモーターの軸受部には流体軸受が使用されており、ベアリングによる騒音が出ない構造となっている一方で衝撃などのダメージには弱く、落下などの衝撃で軸受けが損傷し、回転不能あるいは回転障害となるケースがありますので注意を要します。
※ハードディスクの開封にはクリーンルームなどの防塵設備と熟練した技術が要求されます。
一般空間での開封はハードディスクにとって致命的なダメージになりますのでご注意ください。