ハードディスクの起動の仕組み
ハードディスクはそれ自身の内部で完結した処理系を有しています。ハードディスクのコントローラ基板上にはマイコンを内蔵したコントローラチップ(SoC)が搭載されており、ハードディスクに電源が供給されると、コントローラはハードディスク全体を自己診断し、必要な起動プロセスを経てハードディスクを使用可能な状態へと移行させます。
ハードディスクの移動シークエンス
ハードディスクに電源が投入されると、コントローラはまず自分自身を初期化し、次いでバッファーメモリやモータードライバの初期化および診断を行います。(図1)基板上のデバイスに異常がなければ、モータードライバを駆動してスピンドルモーターを回転させ、プラッターが規定の回転数になるのを待ちます。(図2)プラッターが安定して規定回転数に達したことを検出すると、今度はヘッドアクチュエータを駆動するために、ボイスコイルモーターをモータードライバで駆動し、ヘッドを目的のトラックまで移動させます。(図3)
ハードディスクのプラッター上には、ユーザーデータを記録するデータ領域の他に、ハードディスク自身の動作に必要なプログラムやパラメータなどが格納されたシステム領域が存在します。コントローラはこのシステム領域から自身の動作に必要なプログラムやパラメータを読み取り、システム全体の初期化プロセスを完了します。この状態になって初めて、ハードディスクはホストデバイスであるパソコンに対して「準備完了」のステータスを返し、パソコンからのアクセス命令を待つ状態になります。(システム領域のトラック位置はメーカーやモデルによって異なるようです)
ハードディスクに電源が投入されると、コントローラはまず自分自身を初期化し、次いでバッファーメモリやモータードライバの初期化および診断を行います。(図1)基板上のデバイスに異常がなければ、モータードライバを駆動してスピンドルモーターを回転させ、プラッターが規定の回転数になるのを待ちます。(図2)プラッターが安定して規定回転数に達したことを検出すると、今度はヘッドアクチュエータを駆動するために、ボイスコイルモーターをモータードライバで駆動し、ヘッドを目的のトラックまで移動させます。(図3)
ハードディスクのプラッター上には、ユーザーデータを記録するデータ領域の他に、ハードディスク自身の動作に必要なプログラムやパラメータなどが格納されたシステム領域が存在します。コントローラはこのシステム領域から自身の動作に必要なプログラムやパラメータを読み取り、システム全体の初期化プロセスを完了します。この状態になって初めて、ハードディスクはホストデバイスであるパソコンに対して「準備完了」のステータスを返し、パソコンからのアクセス命令を待つ状態になります。(システム領域のトラック位置はメーカーやモデルによって異なるようです)
無音&異音はトラブル発生のサイン
ハードディスクに何らかの物理損傷が発生すると、この起動プロセスを完了することができなくなり、いつまで待ってもパソコンが起動しない状態になります。パソコンにハードディスクのアクセスランプがある場合には、このランプが点灯したままになることからも、この状態を確認できます。
物理損傷にはさまざまな種類がありますが、コントローラの初期化段階で異常が発生した場合、プラッターが廻りません。このことは、パソコンのハードディスク付近に耳を近づけてみればわかります。回転音が全く聞こえない場合には、ハードディスクが正常に起動していないと考えられます。
一方、プラッターの回転音がするものの、これとは別に「カツン、カツン…」と繰り返し金属音が聞こえてくるケースがあります。これはヘッドアクチュエータがヘッドの移動(スイング)を繰り返している音ですが、この場合も物理損傷が強く疑われます。この音はハードディスクの起動シークエンスにおいて、ヘッドがシステム領域を正常に読み出せない場合に多く見られます。その原因としては、回路(電気)的な故障、ヘッド損傷、プラッター損傷などがありますが、いずれの場合もこの状態で通電を続けることは好ましくありません。速やかに電源を切り、できるだけ再稼働を避け、必要であればデータ復旧サービスをご利用ください。
2種類あるヘッドの退避方法
ハードディスクのヘッドは、動作時にはプラッターの回転にともなって発生する気流によって、ほんのわずか(0.1ミクロン前後)浮上した状態になっています。この状態でヘッドはプラッター上を滑るように移動し、プラッターに接触することなく磁気データの読み書きを行います。しかし電源が切れてプラッターの回転が止まると、ヘッドを浮上させていた力は失われ、ヘッドがプラッター上に接触します。両者は非常に滑らかな鏡面になっているため、このままではヘッドがプラッターに吸着してしまい、スピンドルモーターを再起動することができなくなります。また無理に起動させるとプラッターの磁性体剥離やヘッド損傷の原因になります。
これを避けるため、ハードディスクは非動作時にはヘッドを安全地帯に待避させます。これは停止状態で外部からなんらかの衝撃を受けた場合、プラッターのデータ領域やヘッドに傷が付くことを避けることと、先に述べたように停止しているプラッター上にヘッドが吸着(固着)するのを防ぐことの2つの目的があります。
ヘッドの待避方法には2つの方式があり、1つは最内周のシッピングゾーンと呼ばれる場所にヘッドを移動する方法、もう1つはランプロードと呼ばれる格納場所にヘッドを待避させる方法です。(図4)
シッピングゾーンは通常プラッターの最内周に用意され、この部分にはヘッドが吸着しないように表面処理が施してあります。また起動をスムーズにするために特殊なオイルが塗布されており、起動時と停止時にはヘッドは必ずここに移動するように制御されます。言ってみればシッピングゾーンはヘッドという飛行機を離着陸させるための滑走路であり、駐機場でもあります。(写真1)
一方、ランプロードはプラッターの外部に用意されたヘッドホルダーで、電源が切れている場合や、スリープ時にはヘッドはここに戻ってくるように制御されています。(写真2)また非動作時には衝撃などでランプロードからヘッドアクチュエータが脱出してしまわないように、アクチュエータを固定するロック機能が備えられている場合がほとんどです。(写真3)
写真7 プラッターの中心部にはスピンドルモーターがあります。この写真はプラッターを取り外した状態のもので、スピンドルモーターがダイキャスト製のシャーシに埋め込まれているのがわかります。 シッピングゾーン方式は、機構が非常にシンプルで部品点数を少なくできるメリットがありますが、非動作時にヘッドとプラッターが接触状態にあるため、衝撃に弱いデメリットがあります。ランプロード方式はランプ機構やアクチュエータロック機構など、メカニズムが複雑になるデメリットがありますが、ヘッドを完全にプラッターから待避できるため、非動作時の衝撃に強いメリットがあります。またシッピングゾーンが不要になるため、最内周までデータ記録に使える点も有利です。
数年前までは、モバイル機器などに搭載され持ち運ぶ機会の多い2.5インチHDDがランプロード方式を、衝撃を受けにくいデスクトップやサーバ機器向けの3.5インチHDDがシッピングゾーン方式を採用するケースが多かったのですが、最近では3.5インチHDDでもランプロード方式のモデルが当たり前になり、非動作時の耐衝撃性能が大きく向上しています。