日本は地震や津波、台風といった自然災害の多い国です。世界で起こる地震のおよそ10%が日本周辺は起きているといわれ、それに伴う火災や津波といった別の災害による被害も発生しています。
万が一、自然災害でデータが破損してしまった場合、データ復旧は可能なのでしょうか。
ここでは、自然災害で起こる記憶媒体の障害や、データ復旧の可否についてご紹介します。
1 災害による被害の多くは物理障害
一口に災害とはいっても、その種類はさまざまです。地震や火災、津波、落雷、土砂崩れ、台風など、パソコンに直接影響を与えそうなものだけでも多くの種類があります。
そのような自然災害によってHDDが被害に遭うケースの多くは、物理障害という記憶媒体そのものの破損です。
データが破損する論理障害よりも物理障害の方が重度で、データ復旧の確率も低くなります。
物理障害の場合、フリーあるいは市販のデータ復旧ソフトを使っても、データを復旧することはできません。必然的に、データ復旧業者を利用することになります。
2 自然災害で損傷したHDDでもデータは復旧できる?
物理障害は論理障害に比べるとデータ復旧率は低くなりますが、物理障害全ての難度が高いわけではありません。中には、比較的復旧が簡単な物理障害もあります。その代表が、落下の衝撃による破損です。
大きな地震の揺れでパソコンが倒れた時に、衝撃によってHDD内部のアームやヘッド、モーターが破損する可能性があります。
HDDが動作している状態で衝撃を受けると破損は大きくなりますが、動作を停止している状態なら、破損はそこまで酷くなりません。プラッタに傷が入らなければ、高い確率でデータを復旧できるとされています。
3 自然災害後にデータ復旧の確率を上げる対処法
自然災害によってHDDが故障した場合、基本的には自力でデータ復旧を行うことはできません。そのため、データ復旧の専門業者に依頼することになります。
データ復旧の成功率を上げるには、症状に合わせて適切な対処をしたうえで、専門業者に依頼することが大切です。
自然災害で起こり得るHDDの被害と、それぞれの対処法をご紹介します。
3-1 地震などによる機器の転倒
地震などでHDDが落下・転倒した場合は、内部の部品が物理的に壊れている可能性があります。
電源を入れると故障がさらに悪化する恐れがあるため、すぐに電源を切って使用を控えることが大切です。
3-2 水害による水没
津波や洪水など、水害によって水没したり、泥まみれになったりすることも考えられます。
水害に遭ったHDDの内部には、細かな汚れが入り込んでいる可能性があります。乾燥させると、データの記録面に不純物が固着してしまう恐れがあるため、ぬらして絞ったタオルなどに包んだうえで、食品保存用袋に入れて保管してください。
泥で汚れたHDDも、水洗いするとデータの記録面が傷ついてしまうので、洗わずそのままの状態で専門業者に持ち込むことが重要です。
また、海水につかったHDDはできる限り早く依頼しましょう。海水につかったHDDは普通の水につかったものに比べて腐食しやすく、時間をかけると手遅れになる可能性が高まります。
3-3 停電による故障
地震や雷といった自然災害に付随して発生する停電も、HDDが故障する原因のひとつです。停電によって機器への電力供給が急に止まると、データが消えたり、機器が故障したりする可能性があります。
停電発生後に電源がつかなくなった場合は、何度も電源が入るか試すのは控えてください。機器に負荷をかけないように、電源を切ったまま保管することが重要です。
4 データ消失を防ぐための事前対策
どれだけ対策をしていたとしても、自然災害の発生や、災害によってHDDが故障するのを確実に防ぐことはできません。
しかし、事前に対策を行ってデータ消失のリスクを減らすことはできます。
自然災害に備えて、HDD内のデータは定期的にバックアップを取っておくことが大切です。バックアップがあれば、万が一HDDが壊れてしまったとしても、データを取り戻すことができます。
ただし、バックアップした媒体が元データと同じ場所にあると、同時に被害を受けてしまいます。クラウドサービスを利用したり、遠隔地に記録媒体を保管したりして、データを物理的に分散することが重要です。
また、耐震性や防水性を考慮した設計の建物にデータを保管し物理障害の発生リスクを下げる、急な停電に備えて無停電電源装置(UPS)を用意するといった対策を行うこともおすすめします。