パソコンで作業をしている時、HDD(ハードディスクドライブ)の故障で作業を進められなくなったという経験を持つ人は少なくないと思います。
HDDのトラブルにはさまざまなケースが考えられるため、まずはしっかり症状を見極めることが重要です。
また、HDD内の保存データを復旧するには、故障時にやってはいけないことを把握しておき、正しい対処を行う必要もあります。
この記事では、HDDのトラブルの種類や故障時の対処法についてご紹介します。
1 HDDのトラブルは大きく分けて2種類
HDDのトラブルは、障害の内容から「物理障害」と「論理障害」に大きく分けることができます。適した復旧方法を試みるには、どちらの障害が発生しているかを正確に把握することが大切です。
ここでは、物理障害と論理障害について、それぞれどのような障害なのかをご説明します。
1-1 物理障害
物理障害とは、HDDが物理的に破損して正常に起動できなくなった状態のことです。落下による衝撃や水没、長年の使用による経年劣化などで発生するケースが見られます。物理障害によって引き起こされる症状の例は、以下の通りです。
- HDD自体を認識しない、または読み書きのスピードが遅い
- 焦げ臭いにおいがする
- 異音がする
上記のような症状が発生していて、物理障害が疑われる場合は、HDD本体の分解や部品交換を行わなければならない可能性があります。
1-2 論理障害
論理障害とは、HDDに物理的な破損はないものの、ファイルシステムやデータファイル、フォルダ構成など、内部データに問題が発生している状態を指します。誤ってデータを削除してしまった、フォーマット(初期化)したなど、人為的な操作ミスによって発生するケースが多いです。また、停電などによる急な切電も、論理障害の原因になり得ます。
論理障害によって引き起こされる症状としては、以下が挙げられます。
- ブルースクリーンが表示される、起動を繰り返す
- ファイルやフォルダを開けない
- BIOSではHDDを認識しているが、管理画面で容量は出ているもののRAWとなっている
明らかな操作ミスによる論理障害は、市販のデータ復旧ソフトを使って解決できる場合もあります。しかし、障害の原因が特定できない時は、論理障害ではなく物理障害が発生している可能性もあるため、慎重な対処が必要です。
2 障害が起きた際にやってはいけないこと
物理障害と論理障害のいずれの場合も、HDD内のデータを守るためにはすぐパソコンの電源を落として、使用を中止する必要があります。これは、使用を続けると症状が悪化したり、残っているかもしれないデータが消えたりする恐れがあるためです。
また、故障の原因が正確にわからない段階で、市販のHDDデータ復旧ソフトなどを利用するのは避けた方が良いでしょう。ソフトによる復旧がうまくいかなかった場合、HDD内のデータ復旧ができなくなる恐れがあります。
3 データ復旧の際に注意すること
データ復旧とは、物理的な故障やファイル破損などが原因で読み込めなくなったHDD内のデータを復元することを指します。データ復旧を行う際に注意したいのは、物理障害と論理障害で対処法が大きく変わる点です。データ復旧の際に注意したいことを、それぞれのケースごとにご紹介します。
3-1 物理障害の場合
物理障害が原因となっているケースでは、論理障害に比べて状態が深刻なことが多いです。HDDが物理的に損傷している場合、個人で復旧を試みるのは難しくなります。
また、市販のデータ復旧ソフトは物理障害に対応していません。物理障害のデータ復旧には、専用設備環境下での技術と機械的な回復措置が必要になるため、専門業者へ相談するのが確実です。自力での復旧は事態を悪化させる恐れがあり、絶対におすすめしません。
3-2 論理障害の場合
明らかな誤操作の論理障害は、市販のデータ復旧ソフトを使ってデータを復旧できる可能性があります。ただし、重度の論理障害が起こっている場合は、データ復旧ソフトでは対処が難しいです。
また、データ復旧ソフトを使う時に正しい操作を行わないと、状態がさらに悪化してしまい、専門業者でもデータ復旧ができなくなる可能性もあります。
HDD内に大切なデータが保存されている場合は、データ復旧ソフトを使用する前に、専門業者に相談するのがおすすめです。
4 自力で障害を復旧する方法は?
軽度な論理障害は自力で復旧できる可能性があります。ここからは、自分自身でHDDの障害を復旧する方法の例をご紹介します。
ただし、重度な論理障害や物理障害は、以下の対処法を行うと状態が悪化する恐れも捨てきれません。軽度な論理障害の時だけ、以下の方法を試すようにしてください。
4-1 スタートアップ修復を行う
Windowsパソコンは2回連続で正常に起動しないと、内蔵HDDの起動システムを修復する「スタートアップ修復」が自動的に立ち上がります。スタートアップ修復が表示された際は、試してみると良いでしょう。
スタートアップ修復が失敗する場合は、HDDに何らかのトラブルが発生していると考えられます。
スタートアップ修復はHDDにかかる負荷が大きく、状態が悪化する恐れがある点に注意が必要です。
4-2 エラーチェックを実行する
Windowsパソコンは、チェックディスク機能でHDDのシステムエラーや故障を確認・修復できます。Windowsを搭載したパソコンでエラーチェックを行う方法は、以下のとおりです。
- 「エクスプローラー」を開いて「PC」を選択する
- 確認したいHDDを右クリックして、表示されたメニューから「プロパティ」を選択する
- 「ツール」タブを開き、エラーチェック項目にある「チェック」を選択する
- エラーがある場合は、表示に従ってHDDの修復を行う
4-3 「sfc /scannow」を実行する
パソコンの起動に必要なシステムファイルに問題が起きている時は、「sfc /scannow」(システムファイルチェッカー)の実行で解決できる可能性があります。システムファイルチェッカーを実行する手順は、以下のとおりです。
- タスクバーの検索ボックスに「コマンドプロンプト」と入力し、表示された一覧からコマンドプロンプトを起動する
- コマンドプロンプトに「sfc /scannow」と入力して「Enter」キーを押す
- 「システムスキャンが開始しています」と表示されるので「検証100%が完了しました」と表示されるまで待つ
スキャン後「Windows リソース保護により、破損したファイルが見つかりましたが、それらの一部は修復できませんでした」などと表示された時は、「chkdsk c: /f」または「DISM /Online /Cleanup-image /Restorehealth」のコマンドを試してみましょう。
「Windowsリソース保護は要求された操作を実行できませんでした。」と表示された時は、パソコンを再起動するか、セーフモードで起動してみてください。
4-4 データ復旧ソフトを使用する
消えたデータを取り戻したい時は、データ復旧ソフトを使用する方法もあります。無料で使えるフリーソフトもあるため、手軽に試しやすいのがメリットです。
ただし、データ復旧ソフトを使用したことが原因で、データ復旧が不可能になる恐れもあります。確実にデータを取り戻したい方は、使用を控えることをおすすめします。
5 障害発生時は早めに専門業者にご相談を
データ復旧にあたっては、最初に障害の状況を把握することが大切です。物理障害と論理障害のいずれのケースであっても、データ復旧を行うには専門知識が欠かせません。エラーチェックを実行したり、市販のデータ復旧ソフトを使ったりした結果、かえって状況が悪化する可能性もあります。
問い合わせに無料で対応してくれる業者もあるため、障害発生時には知識や経験が豊富で、専用の環境設備を有している専門業者に相談することをおすすめします。