USBメモリは、コンパクトで持ち運びがしやすく、差し込むだけで簡単に使えることから、幅広く使われている外付けストレージです。しかし、USBメモリ内に保存したデータが突然破損したり、消えてしまったりすることも少なくありません。このような障害が発生した場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。
今回は、USBメモリで起こる障害の種類や障害発生時の注意点、データ復旧の方法などをご紹介します。
1 USBメモリのデータが読み取れない原因
USBメモリ内のデータが消える、アクセスできないといったトラブルは、なぜ起こるのでしょうか。ここでは、USBメモリのデータが読み取れなくなる原因や、具体的な症状をご紹介します。
1-1 物理障害
物理障害とは、USBメモリ自体が物理的に破損した状態のことです。落下の衝撃で本体が割れや変形を起こした、端子が折れた、水没した、長期間の使用によって経年劣化が生じたなどが、物理障害の原因として挙げられます。
物理障害が起きると、USBメモリ自体が認識されなかったり、データにアクセスできなかったりする場合が多く、自力で復旧させることはほぼ不可能です。
1-2 論理障害
論理障害とは、USBメモリ内に保存したデータが、内部システムの異常などで破損している状態のことです。データにアクセスできない、フリーズしたまま動作しない、ファイル名が文字化けするといった症状が起こります。
論理障害の原因としては、USBメモリ内のデータを消去・初期化(フォーマット)したなどの誤操作や、システムの異常、ウイルス感染などが考えられます。
論理障害が起こったUSBメモリを使い続けると、障害がさらに悪化する恐れもあるため注意しましょう。
1-3 USBメモリの寿命にも注意
USBメモリは、フラッシュメモリと呼ばれる記憶装置にデータを保存しています。フラッシュメモリにはSLCやMLC、TLCといった種類があり、それぞれデータを書き換えできる上限の目安(寿命)があります。フラッシュメモリの書き換え回数の目安は、以下の通りです。
- SLC:最大10万回ほど
- MLC:最大1万回ほど
- TLC:最大数百回~数千回ほど
書き換え回数が上限を超えて寿命を迎えると、データの読み込みや書き込みができなくなる恐れがあります。
2 障害発生時にやってはいけないこと
USBメモリに障害が発生している場合は、取り扱いに注意が必要です。誤った対処をした結果、データ復旧が難しくなる可能性もあります。
ここでは、USBメモリに障害が発生した際に、やってはいけないことをご紹介します。
2-1 再起動や抜き差しを何度も繰り返す
USBメモリを接続した機器の再起動を繰り返すと、USBメモリに大きな負荷がかかって障害が悪化する可能性があります。調子が良くないからと、何度も再起動を行うのは避けましょう。
また、USBメモリを何度も抜き差しすることで、端子部分に傷ができたり、データが上書きされたりして、障害が悪化する恐れがあります。
2-2 不具合のあるUSBメモリを使い続ける
データが消えてしまった、エラーメッセージが表示されるなど、不具合が見られるUSBメモリを使い続けるのは避けましょう。
データが消えてしまったとしても、画面上は見えなくなっただけで、データそのものはUSBメモリ内に残っている可能性があります。
不具合が起きたUSBメモリをそのまま使い続けると、データが上書きされて完全に消えてしまう恐れがあります。
反対に、すぐに使用を中止すれば、データを取り戻せる可能性を上げることが可能です。何らかの障害が疑われる時は、すぐに使用をやめることを心がけましょう。
2-3 フォーマットを行う
USBメモリに障害が発生すると、「フォーマットが必要です」というメッセージが表示されることがあります。大切なデータが入っている場合は、メッセージが出たからといって安易にフォーマットを行うのは避けてください。
フォーマットを行うと内部データは完全に消えてしまうため、データ復旧も極めて困難になります。
2-4 メーカーなどに修理を依頼する
USBメモリが故障した時は、メーカーや販売店に持ち込んで修理を依頼することもできます。ただし、修理の目的はあくまでも故障したUSBメモリを正常な状態にすることで、失ったデータを取り出すことではありません。
基本的に、修理に出したUSBメモリ内のデータは全て消えてしまいます。
データ復旧と修理では目的が異なるため、消えてしまったデータを復元したい方は注意が必要です。
3 USBメモリ内のデータを復旧する方法
USBメモリに障害が発生しても、すぐに中のデータを諦める必要はありません。たとえ障害が起こっても、USBメモリのデータを復旧できる可能性があります。
USBメモリ内のデータを復旧させる手段は、以下のとおりです。
3-1 以前のバージョンの復元機能を使う
前述のとおり、消去したデータは画面上では確認できないだけで、USBメモリ内には残っています。
データを誤って消した、上書きしたなどのケースに限られますが、windowsの「以前のバージョンの復元」機能を使うことで、データ復旧できる可能性があります。
【以前のバージョンの復元を行う手順(windows 10/11の場合)】
- USBメモリをパソコンに接続する
- 復元したいデータが含まれていたフォルダを右クリックして「以前のバージョンの復元」を選択する
- 「フォルダのバージョン」欄に利用可能なバージョンの一覧が表示されるため、自分が復元したいバージョンを選択して「復元」ボタンをクリックする
ただし、以前のバージョンの復元機能を使用するには、事前にパソコンの「ファイル履歴」機能を有効にしておく必要があります。設定が無効になっている時は、別の方法でデータ復旧を行ってください。
3-2 コマンドプロンプトを使用する
削除していないのにUSBメモリ内のデータが消えている時は、コマンドプロンプトを使用することで、データ復旧を行える可能性もあります。
【コマンドプロンプトの手順】
- USBメモリをパソコンに差し込む
- タスクバーの検索ボックスに「cmd」または「コマンドプロンプト」と入力し、コマンドプロンプトを管理者として実行する
- 「chkdsk F: /f」と入力してEnterキーを押す
- 「attrib -h -r -s F:\*.* /s /d」と入力してEnterキーを押す
コマンドの「F」は、USBメモリのドライブ文字に置き換えてください。この方法は、操作を誤るとデータを取り出せなくなる恐れがあります。不安な方は避けた方が良いでしょう。
3-3 データ復旧ソフトを利用する
軽度の論理障害は、データ復旧ソフトで対処できる可能性があります。データ復旧ソフトには、有料・無料を問わずさまざまなものが公開されていて、使い方も比較的簡単なものが多いです。データ復旧ソフトで対処できれば、専門業者への依頼よりコストを抑えられます。
ただし、ソフトによってはデータを上書きしてしまい、事態が悪化することもあるので注意が必要です。
また、物理障害が原因のデータ消失は、データ復旧ソフトでは復旧できません。
3-4 データ復旧業者に依頼する
安全にデータを復旧させたい方は、データ復旧業者に依頼するのがおすすめです。データ復旧ソフトで対処できない物理障害や重度の論理障害でも、対応できる可能性が高いです。
ただし、業者によってデータ復旧の技術力に差があるため、依頼する際は高い技術力を持った業者かどうかを確認しておきましょう。
4 障害発生時は無理せず早めに専門業者に相談しよう
USBメモリは持ち運びが簡単で扱いやすい一方で、破損や誤操作といったトラブルを招くこともあります。障害が発生した際は、抜き差しを繰り返したり安易にフォーマットしたりせず、確実な方法での復旧を検討しましょう。
状況次第では、パソコンに備わっている機能やデータ復旧ソフトも役に立ちますが、自力での対処は障害が悪化するリスクを伴います。USBメモリ内に大事なデータがあるなど、安全に復旧させたい時は無理をせず、早めに専門業者へ相談することがおすすめです。