NAS(Network Attached Storage)とは、ネットワーク上で複数のパソコンやスマートフォンなどと接続できる記憶装置のことです。保存しているデータを、何台ものデバイスで共有することができます。
しかし、何らかの原因でデータが失われることがあるため、取り扱いには注意しなければいけません。障害発生後の対処方法によっては、状態がかえって悪化する可能性もあります。
今回は、NASで発生し得る障害の種類や、データ復旧の可能性を高めるためのポイント、データが消えてしまった場合の復旧方法などをご紹介します。
1 NASからデータが消える原因は?
NASからデータが消えてしまったり、データにアクセスできなくなったりする原因は、大きく2つに分けられます。ここでは、それぞれの障害の内容や症状をご紹介します。
1-1 物理障害
物理障害とは、NAS本体や内部のHDD/SSDが物理的に破損した状態を指します。本体を落下させた衝撃による破損や水没、経年劣化、落雷による停電などが、物理障害の主な原因です。
異音や異臭がする、NASのランプが点灯するなどで、起こった障害や状況がわかる場合もあります。
NASが物理的に破損してしまうと、正常に動作しなくなることがほとんどで、自力でのデータ復旧はほぼ不可能です。
1-2 論理障害
論理障害とは、HDDやSSD内に保存されているデータやファイルシステムが破損した状態を指します。誤操作によるデータの削除や上書き、HDD/SSDの初期化、ウイルスへの感染、停電によるシステム破損、起動中にケーブルを抜いてしまうことなどが、論理障害の主な原因です。
論理障害が発生すると、ファイルやフォルダにアクセスできない、データが開けない、文字化けするといった症状が考えられます。
2 NASのデータ復旧率を高めるためのポイント
NAS本体や内部のHDD/SSDに障害が疑われる場合、誤った対応を行うとデータ復旧が困難になってしまいます。
ここでは、障害発生時の対処法や注意点をご紹介します。
2-1ケーブル類の接続を確認する
NASが起動しない、認識しないといった不具合が起こった際は、最初にケーブル類の接続を確認してみましょう。断線していた、抜けかかっている、差し込む場所が違うなど、接続不良や電力不足が原因で、NASに問題が発生している可能性があります。
ケーブルの接続不良が原因の時は、電源ランプが普段と異なる色で点滅したり、エラーメッセージやエラーコードが表示されたりすることもあるため、併せて確認するのがポイントです。
ケーブル類の接続不良が原因であれば、接続し直すだけで不具合が解決することもあります。
2-2 使用を続けない
重度の故障や障害、データ消失などが発生した際は、すぐにNASの使用を止めましょう。そのまま使用を続けると、状態の悪化やデータの上書きが行われてしまい、データ復旧が困難になる恐れがあります。
故障の原因がわからない場合は電源のオン/オフ操作を行うのではなく、電源を切っておくことがおすすめです。
2-3 HDDを抜き差ししない
障害発生時は、HDDの抜き差しを避けることも大切です。NASからHDDを抜き取って交換したり、順番の入れ替えを行ったりすると、RAIDの構成が崩れてしまいます。
データの破損や消失のリスクが高まり、データ復旧の可能性が低くなるため注意しましょう。
2-4 リビルドは避ける
障害が疑われるときは、RAIDのリビルド(再構築)を安易に行わないようにしましょう。リビルドとは、複数台あるHDDのうち1台が故障した際に、正常に動作するHDDからデータを復元する作業のことです。
リビルドを行うと、別の正常なHDDでも障害が発生し、データ復旧が不可能になる恐れもあります。
2-5 NASを修理に出すのは注意
NASに故障や障害が見られる時、メーカーに修理を依頼する方もいらっしゃるでしょう。ただし、修理は機器を正常に起動させることが目的で、HDDやSSD内に保存してあるデータまでは保証されません。初期化や部品の交換によって、データが失われる可能性もあります。
本体が動くようになれば良いという時は有効ですが、重要なデータを取り戻したい方は、別の方法でデータ復旧を行いましょう。
3 個人でできるNAS本体・データの復旧方法
NASに障害が発生した場合も、対処法次第ではデータを復旧できる可能性があります。ここでは、NASのデータを復旧させる方法をご紹介します。
3-1 NAS本体を確認する
NASが起動しない、何らかの不具合が発生しているという場合は、NASを再起動することで問題が解決する可能性があります。ネットワークケーブルをつないだ状態で、再起動を行ってみるのも有効です。再起動の方法は製品ごとに異なるので、取扱説明書などを確認しましょう。
また、ソフトウェアやファームウェアが原因で不具合が起こっている時は、最新バージョンのインストールによって状態が改善することもあります。
3-2 バックアップ機能を確認する
NAS設置時に、外付けHDDや別のNASなど、別メディアへ定期的にデータのバックアップを取る設定がなされている場合があります。データ消失が疑われる場合は、最初にバックアップ機能を確認してみると良いでしょう。
バックアップ機能が設定されていて、正常にバックアップができていれば、そこからデータの復元を行えます。
3-3 ごみ箱機能を確認する
NASの機種によりますが、「ごみ箱機能」が搭載されているタイプもあります。ごみ箱機能の確認も、忘れずに行いましょう。
ごみ箱機能が有効になっていれば、誤操作でデータを削除してしまった場合、データの復元が可能です。
3-4 データ復旧ソフトを使用する
軽度の論理障害なら、データ復旧ソフトを使ってデータを復旧できる可能性もあります。データ復旧ソフトには無料のものから有料版までさまざまな種類がありますが、いずれの場合も、必ずデータを復旧できるとは限らない点に注意しましょう。
例えば、物理障害が原因で不具合が発生している場合、データ復旧ソフトでの復旧は困難です。場合によっては、HDDへの負荷が増大して状態がさらに悪化したり、データが上書きされたりする恐れもあります。
4 データ復旧は専門業者に依頼するのが確実
NASの不具合やトラブルは、さまざまなケースがあります。データ復旧を自力で行おうとした結果、状態がさらに悪化してデータが完全に消えてしまう恐れも捨てきれません。
データをできるだけ安全に復旧したい場合は、状態が悪化する前に専門業者に相談するのがおすすめです。自力で対処するよりも、プロの専門業者に依頼したほうがデータ復旧の可能性は高くなります。
しかし、専門業者ごとに技術力や対応できる障害の種類などは異なります。高い技術力や多くの実績を持つ専門業者に相談・依頼すると良いでしょう。
5 NASのデータ復旧が困難な場合は早めに専門業者に相談しよう
NASやHDDは消耗品で、使い続ける中で劣化していくものです。データが開けなくなった、消えてしまったなどのトラブルは、突然起きる可能性があります。
このような障害が発生した場合は、HDDの抜き差しを繰り返したり、安易にリビルドを行ったりせず、まずは落ち着いて使用を中止しましょう。
障害の種類によっては自力でデータ復旧させることもできますが、対処に自信がない場合や、どうしても復旧したい大事なデータがある場合は、早めに専門業者へご相談ください。