複数のHDDを使って大量のデータを扱う「RAID」は、企業などの重要なデータを管理する目的でも用いられています。万が一障害が発生すると、データにアクセスできなくなったり、データが失われたりする可能性が考えられます。重要なデータを守るためには、障害の原因や対処法を知っておくことが大切です。
今回は、RAIDで障害が起こる原因や、RAIDモード(レベル)ごとのデータ復旧の方法についてご紹介します。
1 RAIDの特長
RAID(Redundant Array of Inexpensive Disks)とは、2台以上のHDDを1台のHDDのように認識させる技術のことです。RAID0やRAID1など、複数のモードがあり、それぞれ特長が異なります。
例えば、RAID0は複数のHDDにデータを分散して書き込むことで、データの読み書きを高速化することが可能です。
他にも、RAID1やRAID5など、特定の範囲内であれば、HDDが故障してもデータを取り扱えるモードもあります。データ転送の高速化や、冗長性の確保など、用途に合わせてデータの保存方法を選択できる点が特長です。
2 RAIDのデータに障害が起こる原因
RAIDの中には冗長性を確保できるモードもありますが、データが失われるリスクをゼロにできるわけではありません。RAIDのデータに障害が起こる主な原因としては、以下が挙げられます。
2-1 HDDの故障
落下による衝撃や水没、経年劣化、停電、落雷などが原因で、HDDや筐体が物理的に故障することで、データ障害が発生することがあります。
物理障害が発生した場合、RAID機器が起動しなくなる、サーバーにアクセスできない、異音がするなどの症状が出ることが多いです。
HDDの物理的な故障が原因で障害が発生している場合、データ復旧には高度な技術力が必要になります。基本的に、自力で対処することはできません。
2-2 HDD内のデータの破損
HDDや筐体に問題はないものの、HDD内に保存されたデータが破損している場合もあります。誤操作によるデータの削除やウィルス感染、ファイルシステム障害などが、データ破損の原因です。
データが破損すると、内蔵HDDやネットワーク上のRAID装置を認識できない、フォーマットを要求されるなどの症状がみられます。そのまま使用を続けると、上書きなどでデータ復旧が困難になる場合があるため、すぐに使用を中止してください。
2-3 RAIDコントローラの障害
複数のHDDを1つにまとめる役割を持つ「RAIDコントローラ」の故障も、データ障害の原因となります。RAIDコントローラの故障は、経年劣化や衝撃、熱暴走などで発生することがあります。
RAIDコントローラに問題がある場合、HDDが認識できない、RAIDの構成情報が損傷した、RAIDを構成している機器が起動しない、といった症状が生じます。
3 データ復旧の確率を高めるためのポイント
万が一障害が発生した時は、データ復旧の可能性を高めるために注意したいポイントがいくつかあります。障害が疑われる際には、以下のことを行わないよう注意しましょう。
【電源のオン/オフを繰り返さない】
オン/オフを繰り返すとHDDに負荷がかかり、状態が悪化する恐れがあります。
【RAIDのリビルド(再構築)には注意】
リビルドとは、故障しているHDDのデータを別のHDDに復元し、RAIDを再構築することです。障害が疑われる際にリビルドを行うと、問題がなかったHDDにも障害が波及する恐れがあります。
RAIDの構成に問題が起こる「RAID崩壊」が発生し、RAID機器を起動できなくなったり、データが消えたりする可能性もあるため、リスクを理解したうえで実施してください。
【HDDを交換しない】
障害が疑われる状況でHDDの交換を行うと、強制的にリビルドが開始される恐れがあります。不用意なHDDの交換は避けましょう。
【RAIDコントローラの交換は控える】
障害の原因がRAIDコントローラだとしても、RAIDコントローラを個人で交換するのは控えましょう。特殊な製品も多いため、誤ったRAIDコントローラに交換した結果、データ復旧が困難になる恐れがあります。
4 データに障害が発生した際の対処法
RAIDに障害が発生しても、対処法次第ではデータを復旧できる可能性があります。ここでは、障害が疑われる際の対処法をRAIDのモードごとにご紹介します。
4-1 RAID0
RAID0(ストライピング)とは、2台以上のHDDにデータを分散して書き込む方法です。高速でデータを読み書きできる反面、RAID0では冗長性が確保されません。RAIDを構成しているHDDが1台でも故障すると、全てのデータが使えなくなります。
RAID0の復旧方法は以下のとおりです。
● データ復旧ソフトを使用して復旧を試みる
● 専門業者にデータ復旧を依頼する
4-2 RAID1
RAID1(ミラーリング)は、2台以上のHDDに同じデータを書き込む方法です。HDDが1台故障しても、他のHDDからデータの読み出しを行えます。
ただし、HDDが1台故障しても問題なく動作し続けるため、故障や障害発生に気が付きにくくなります。故障に気付かずそのまま運用を続けた結果、データ消失につながる恐れもあるため、注意が必要です。
RAIDを構成しているディスクドライブのうち、1つ以上のディスクが故障した際は、「RAIDアレイがデグレードモードで動作中」といったメッセージが表示されます。メッセージが表示された際は、すぐに使用を中止してください。
RAID1の障害の復旧方法としては、以下が挙げられます。
● リビルドを行ってRAIDを再構築する
● データ復旧ソフトを使用する
● 専門業者にデータ復旧を依頼する
4-3 RAID5
RAID5は、3台以上のHDDでRAIDを構成する方法で、データ書き込み時に「パリティ」と呼ばれるデータ修復に必要な符号を生成します。HDDが1台故障しても、パリティからデータを復旧できるのが特長です。
RAID5の障害における復旧方法としては、以下が挙げられます。
● リビルドを行ってRAIDを再構築する
● データ復旧ソフトを使用する
● 専門業者にデータ復旧を依頼する
4-4 RAID6
RAID6は、RAID5と同様にパリティを生成して冗長性を確保するモードです。
RAID6はパリティを二重に生成して2台のHDDに記録するため、RAID5よりもデータの安全性に優れています。
ただし、最低でも4台以上のHDDが必要で、書き込み速度もRAID5に比べると遅くなります。
RAID6の障害における復旧方法は、以下のとおりです。
● リビルドを行ってRAIDを再構築する
● データ復旧ソフトを使用する
● 専門業者にデータ復旧を依頼する
5 不安な場合は専門業者に依頼を
RAIDが故障した場合、復旧には専用の設備やツールが必要です。自力でのデータ復旧は難しく、無理に対処を試みた結果、かえって状態を悪化させてしまう恐れもあります。
データ復旧ソフトを使うことで、自力でデータを復元できる可能性もありますが、データ復旧ソフトは軽度の論理障害に対してのみ有効なものです。さらに、RAIDのデータ障害は一般的なデータ復旧ソフトでは対応しきれないことがあります。
不安がある場合には、技術力と知見、実績を有する専門業者に依頼することをぜひご検討ください。
6 日頃からバックアップを取ることが大切
RAIDはモードによってはデータの冗長性を確保できる便利な機能ですが、データを誤消去した、ファイルが破損した、物理的に機器が壊れたなど、データが消失するリスクはゼロにはできません。
HDDやSSDを単体で使用するよりもデータ復旧の難易度も高くなってしまいます。RAID構成を組んだNASやサーバーを使用している時も、日頃から定期的にバックアップを取ることを心がけましょう。
バックアップを外付けストレージなどに用意しておけば、万が一データ障害が起こった時も、すぐに元データを取り戻せる可能性が高まります。
7 RAIDのデータ復旧は慎重に行おう
障害の内容にもよりますが、RAIDのデータ復旧は自力では難しい場合も多いです。データ復旧の可能性を上げるためには、障害が疑われる際は使用をすぐに止めることを心がけましょう。
対処に自信がない場合や、少しでも不安がある場合は、早めに専門業者にご相談ください。