RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)は、データの冗長性確保や、読み書き速度の向上などを目的に、さまざまな場所で使用されている技術です。しかし、RAIDに何らかの問題が発生すると、HDDを交換する必要が生じます。そのような際に役立つのが「ホットスワップ」という仕組みです。
今回は、RAIDにおけるホットスワップの概要やメリット、注意点などをご紹介します。
ホットスワップとは?
ホットスワップ(hot swap)とは、機器の電源を入れて稼働状態(通電された状態)を保ったまま、HDDやファンといった周辺装置や部品を取り外して交換できる機能のことです。「ホットプラグ」や「活線挿抜(かっせんそうばつ)」と呼ばれる場合もあります。
端的に言うと、サーバーやNASの電源を入れたままでも、HDDを交換できる仕組みのことです。
RAID以外では、USBやSATAといった通信インターフェース、メカニカルキーボードのスイッチなどでホットスワップが採用されています。身近な例だと、USBメモリやプリンター、外付けHDDといった機器も、多くがホットスワップ対応です。
ホットスワップ非対応だと何が起こる?
ホットスワップ対応の機器は日常生活でも多く利用されていますが、ホットスワップ非対応の機器も見られます。ホットスワップ非対応の機器だと、どのようなデメリットが生じるのでしょうか。
通電状態にある電気回路において、何の対策もせずに電気信号の配線を突然切り離すと、電気回路が故障する恐れがあります。そのため、ホットスワップに対応していない機器の場合、電源がついたままだと配線の抜き差しを行えません。一度電源を落としてから、配線の着脱を行う必要があります。
一方で、ホットスワップ対応のシステムは、電気回路が故障しないように対策を施しているのが特長です。配線を取り外す前に機器へのアクセスを遮断するなど、稼働状態のまま配線を取り外せるように工夫されています。
ホットスワップ対応機器なら業務への影響は最小限に
ホットスワップに対応したRAIDの場合、通電状態を保ったままHDDの交換作業が行えます。交換作業を行っている間も、通常通りにRAIDを使用することが可能です。
交換作業中にシステムを止める必要がないため、業務への影響を最小限に抑えられます。
ただし、RAIDコントローラーやコネクタといったハードウェアと、BIOSやOSなどのソフトウェアの両方が対応していないと、ホットスワップは使用できません。
併せて覚えておきたいホットスペア
RAIDを構成しているHDDが故障した際に、ホットスワップと同様に役立つ仕組みが「ホットスペア」です。
ホットスペアとは、機器の故障に備えて予備機を通電状態で待機させておく機能、または待機状態にある予備機そのものを指します。ホットスペアを用意しておけば、機器が故障しても予備機を稼働させることで、故障前の状態に自動で修復することが可能です。
例えば、RAIDを構成しているHDDが1台故障した場合、あらかじめ待機させていたホットスペアのHDDを稼働させることで、自動で障害から復旧します。
耐障害性を高めているシステムで、採用されることが多い仕組みです。
HDDに障害がある場合はデータ復旧業者に依頼を
RAIDの障害が疑われる場合、「異常が発生しているHDDを交換し、RAIDの再構築(リビルド)を行うことで機能を回復させる」という手順で修復を試みるのが一般的です。
しかし、障害の実態が正確に報告されないケースや、実際には複数のHDDが破損しているのに異常が検出されていないケースも考えられます。
RAIDを構成するHDDのうち1台を取り換えると、RAID機器は新しいHDDを加えた形で再構築を開始します。その際に予期せぬ動作不良が生じるなどして、再構築が途中で停止してしまうと、正常なファイルまで完全に消えてしまう恐れがあります。
つまり、ホットスワップやホットスペアといった仕組みに対応している場合であっても、自力での修復を試みた結果、データを失ってしまう可能性があるということです。
重要なデータが保存されているRAIDに何らかの障害が発生した場合は、データ復旧業者に依頼することをおすすめします。
RAIDの安定稼働に欠かせないホットスワップ
ホットスワップに対応しているRAID機器なら、稼働中に電源を落とさなくてもHDDの交換を行えます。仮に何らかの問題が発生した場合も、システムを停止せずに対処することが可能です。
ただし、HDDを取り換えたことが原因で予期せぬ再構築が発生し、正常なファイルまで消えてしまう恐れも捨てきれません。
RAID機器に重要なデータを保存している場合は、ホットスワップ対応であっても、安易な交換作業は避けることをおすすめします。データの消失など、さらに状況が悪化するのを防ぐためには、データ復旧の専門業者に依頼しましょう。