パソコンやサーバーに不具合が起こった時は、データを復元するためにリストアやリカバリーといった作業を行う必要があります。リストアとリカバリーは似た意味合いで使われる言葉ですが、どのような点が異なるのでしょうか。
今回は、パソコンやサーバーにおけるリストアの意味や、リカバリーとの違い、リカバリーを実施する際の注意点などをご紹介します。
1 リストアの意味とは?
リストア(Restore)とは、元の状態に戻す、修復(復元/復旧)するといった意味を持つ英単語です。パソコンやサーバーにおいては、別の場所に保存しておいたデータやファイルを使って、不具合が生じたデータを復元・復旧したり、システムを正常化したりすることを指します。
また、データを元に戻す目的だけでなく、他のシステムにデータを移動させるためにリストアを行うこともあります。
自動車関連では部品を交換して乗車可能な状態に修復することを「レストア」と呼びますが、リストアと意味は同じです。
2 リストアと関係が深いバックアップとリカバリー
リストアと同じシーンで、バックアップやリカバリーという言葉も使われることがあります。これらの言葉には、どのような違いがあるのでしょうか。
それぞれの意味は、以下のとおりです。
2-1 バックアップ
データの破損や消失に備えて、元データをパソコンやサーバー本体以外の場所に保存することがバックアップです。
このバックアップしたデータから、故障などによって消失したデータを復元するのがリストアとなります。
バックアップは、ディスク内の全てのデータを複製するフルバックアップ、フルバックアップから変更・追加されたデータを複製する差分バックアップ、前回のバックアップから変更・追加されたデータのみ複製する増分バックアップの3種類に大きく分けられます。
バックアップの種類によって、リストアやリカバリーの作業にかかる時間や手間も異なります。
2-2 リカバリー
リストアと似た意味で使われる言葉に、リカバリーがあります。パソコンにおけるリカバリーとは、パソコンを工場出荷時の初期状態に戻す操作のことです。
リカバリーを行うと、自分がパソコンに保存したデータは全て削除されてしまいます。
サーバーやデータベースにおいては、リストアして戻したデータを正常化し、問題なく動かせる状態にすることがリカバリーです。
通常、データベースにはデータファイルとログファイルがあります。データファイルをリストアしただけでは、基本的にデータは利用できません。
リストアしたバックアップデータに最新のログを適用することで、障害が発生する以前の状態までデータを復旧できます。
その後、リカバリーを行いリストアしたバックアップデータを最新化することで、データを問題なく利用できるようになります。
3 リストアを利用するシーンの例
リストアとリカバリーの違いは、利用するシーンを考えてみるとわかりやすくなります。
例えば、故障によってHDDが起動できなくなったり、動作が不安定になったりした際に、別の媒体にバックアップしておいたデータを使ってシステムを初期状態に戻す行為はリストアです。
新しいパソコンやサーバーにデータを移行させるのもリストアに当たります。
その後、リストアしたデータを問題なく使える状態にすることがリカバリーです。
一見すると似たような意味でわかりにくいですが、リストアとリカバリーでは、作業を行う状況や範囲が異なります。
4 リカバリーを実施する際の注意点
リストアやリカバリー、バックアップといった作業は役に立つ反面、方法を間違えると別のトラブルにつながる可能性があります。
リカバリー作業を行う時は、以下の点に注意が必要です。
4-1 パソコンのデータが消えてしまう
パソコンでリカバリー作業を行うと、保存していたデータは全て消えてしまいます。バックアップしていないデータは復元できなくなるため注意しましょう。
パソコン内に大切なデータを保存している場合は、必ずバックアップを取っておくことが重要です。
4-2 時間がかかる
リストアやリカバリーの作業は、長い時間がかかる点にも注意が必要です。データ容量などにもよりますが、数時間ほどで終わる場合もあれば、半日以上かかることもあります。
リストアやリカバリーの作業は、時間に十分な余裕があるタイミングで行うと良いでしょう。
また、リストアやリカバリーに備えて行うバックアップ作業も、データの容量によっては長い時間を要します。
5 リストア・リカバリーが行えないことも
ストレージに何らかの問題が発生していて、バックアップやリストアがうまく実行できないこともあり得ます。
また、バックアップを取っていたとしても、予想外のエラーによってデータが復元できなかったり、消失したりする可能性もゼロではありません。
1ヶ所にバックアップを取って安心するのではなく、複数の場所にデータのコピーを残しておくと、データの安全性が増します。
万が一、バックアップしたデータからリストア・リカバリーが行えない際は、データ復旧の専門業者に依頼してデータを取り出してもらいましょう。