ネットワークを利用した犯罪行為であるサイバー攻撃は、年を追うごとに手口が巧妙になりつつあります。攻撃の対象となるのは、大手企業だけとは限りません。事業規模に限らず、あらゆる企業にセキュリティ対策が求められます。
具体的に、サイバー攻撃にはどのように対処すれば良いのでしょうか。
ここでは、主なサイバー攻撃の種類や対策方法、万が一被害を受けた後の対処法をご紹介します。
1 サイバー攻撃の目的は?
サイバー攻撃は、インターネットなどを利用してパソコンやサーバー、Webサイトなどに対して行われる、データの抜き取りや改ざん、システム破壊といった攻撃の総称です。
サイバー攻撃の実行者には、個人犯や犯罪組織、産業スパイなどが挙げられます。
実行者が複数考えられるように、サイバー攻撃の目的も、愉快犯によるいたずらや自己満足、営業妨害、社会に対する政治的な主張、私怨による報復、機密情報の抜き出しなどさまざまです。
インターネットの普及に伴いサイバー攻撃は増加傾向にあり、警視庁の公表している資料によると、サイバー犯罪の検挙件数は、2021~2023年まで毎年12,000件を超える数で推移しています。※
2 主なサイバー攻撃の種類
サイバー攻撃を防ぐには、どのような攻撃方法があるのかを知っておくことが大切です。
主なサイバー攻撃の例をご紹介します。
2-1 特定のターゲットを狙った攻撃
よく知られているのが、特定の企業や個人を狙ったサイバー攻撃です。
具体的な攻撃方法としては、次のようなものが挙げられます。
・悪意あるプログラム(マルウェア)を含んだ添付ファイルやURLを送り付ける「標的型攻撃」
・パソコンをウイルス感染させることで、データを使えない状態にして金銭を要求する「ランサムウェア」
・特定の組織が利用するサイトを改ざんしてマルウェア感染を引き起こす「水飲み場攻撃」
・攻撃対象となる企業の子会社や取引先など、セキュリティが脆弱な関連組織を踏み台にした「サプライチェーン攻撃」
・取引先を装った「詐欺メール」 など
2-2 不特定多数を狙った攻撃
特定の個人や企業ではなく、不特定多数を無差別に狙ったサイバー攻撃も存在します。
実在する企業や組織を装った偽サイトを作って、アクセスしたユーザーの情報を盗む「フィッシング詐欺」や、不特定多数の人にマルウェアを含んだURLを送り付ける「スパムメール」などが代表的な例です。
また、ブラウザやパソコンの画面上で偽の警告画面を表示して悪意あるサイトへの遷移を促す手口も、不特定多数を狙ったサイバー攻撃といえます。
2-3 サイトに負荷をかける攻撃
サイトに負荷をかけてサーバーダウンを狙うのも、サイバー攻撃です。1台のパソコンでサーバーを攻撃するDoS攻撃と、複数のパソコンを踏み台にして攻撃を行うDDoS攻撃の2つに大きく分けられます。
具体的には、Webサーバーに接続要求を大量に送り付ける「SYNフラッド攻撃」や、ブラウザにwebページの再読み込みの要求を大量に送り付けることでサーバーに負荷をかける「F5アタック」などがあります。
2-4 脆弱性を突く攻撃
OSやWebサイトなど、システムの脆弱性を狙った攻撃もあります。
データベースの命令文(SQL)を使ってWebアプリの脆弱性を突く「SQLインジェクション」や、サーバーへのリクエストにOSへの命令文を紛れ込ませる「OSコマンドインジェクション」などが代表的です。
2-5 パスワードを狙った攻撃
パスワードを試して情報や金銭などの詐取を狙った攻撃も、サイバー攻撃の一種です。
考えられる全てのパスワードを試す「ブルートフォースアタック(総当たり攻撃)」や、流出したIDとパスワードを別のサービスでも試す「パスワードリスト攻撃」などが具体例として挙げられます。
3 サイバー攻撃への対策方法
サイバー攻撃による被害を防ぐためには、できる範囲で対策を取っておくことが大切です。
企業で行えるサイバー攻撃の対策方法としては、次のようなものが考えられます。
3-1 システムを常に最新の状態にする
サイバー攻撃の多くは、OSやソフトウェアなどの脆弱性を突いてきます。定期的にアップデートを行い、システムを常に最新の状況に保ち続けることが重要です。
アップデートが配布されている場合は、基本的にはすぐに実行することを心がけましょう。
サポート期間が終了するなどで、アップデートが行われないシステムは、それだけでサイバー攻撃のリスクが高くなるため注意が必要です。
3-2 メールやWebブラウザのセキュリティを強化する
脆弱性を突いたもの以外には、メールやWebブラウザを介したサイバー攻撃も多く見られます。それらのセキュリティを強化することで、悪意あるプログラムによる被害を減らすことが可能です。
不審なメールは開かない、添付ファイルを安易にクリックしない、怪しいサイトには接続しないなどの予防策を徹底しましょう。
迷惑メールの受信を防止するサービスや、危険なサイトへのアクセスを防ぐフィルタリングなどの措置を行うのも有効です。
3-3 複雑なパスワードを設定する
パスワードを狙った攻撃を防ぐには、複雑でわかりにくいパスワードを設定するのが基本です。ローマ字や数字、記号を組み合わせて、できるだけ長いパスワードにしましょう。
自分の名前や誕生日、「1234」のようなわかりやすい文字列など、他人に推測されやすいパスワードは避けてください。複数のサイトやサービスで同じパスワードを使うのも、控えることをおすすめします。
複雑なパスワードに加えて、生体認証やSMS認証などの2要素認証も導入すれば、より強固な対策になります。
3-4 セキュリティ対策ソフトを導入する
セキュリティ対策ソフトを導入することで、マルウェア感染をはじめ、さまざまなサイバー攻撃を防ぎやすくなります。
ただし、セキュリティ対策ソフトは既知のマルウェアに対処するためのものです。セキュリティ対策ソフトに検知されないウイルスがサイバー攻撃に用いられた場合は、防ぐことができません。
セキュリティ対策ソフトを導入して安心するのではなく、その他の基本的な対策も実施し続けることが大切です。
3-5 従業員にセキュリティ教育を行う
企業としてどれだけ強固な対策を施したとしても、パソコンの横にパスワードのメモ書きを貼り付けているなど、従業員のセキュリティ意識が不足していては効果が薄れてしまいます。
従業員にセキュリティ教育を行うことも大切です。
また、重要なデータに誰でもアクセスできる状況だと、悪意ある内部の人間がデータを改ざんしたり、持ち出した際に紛失したりすることも考えられます。
必要な人にだけアクセス権限を付与する、重要な情報を持ち出す際のルールを設定するといった対策も必須です。
4 それでもサイバー攻撃が発生した時はデジタルフォレンジックを
どれだけ対策を取っていたとしても、サイバー攻撃を完全に防ぐことはできません。サイバー攻撃を受けた後の対処法も把握しておきましょう。
サイバー攻撃を受けた後は、デジタルフォレンジックを行い原因や犯人を特定して、被害の拡大や再発を防ぐことが重要です。
デジタルフォレンジックとは、サイバー犯罪の被害に遭遇した際に、デジタル機器から証拠を保全・分析する作業や技術のことです。専門知識や設備が必要になるため、専門のデジタルフォレンジックサービスを活用することをおすすめします。
ロジテックのデジタルフォレンジックサービスは、情報漏えいやデータ改ざんなどの調査に対応しています。
データを書き換えることなく保全できるので、保全作業のみの相談も気軽にお問い合わせください。
5 サイバー攻撃を受けた後を考えることも重要
サイバー攻撃は、あらゆる個人・企業が受ける恐れがあるものです。サイバー攻撃に対する対策は、必ず行っておくことをおすすめします。
ただし、対策していたとしても、必ずサイバー攻撃を防ぎ切れるわけではありません。万が一サイバー攻撃の被害に遭ってしまった時は、できるだけ早いうちに、デジタルフォレンジックの専門会社に相談しましょう。