気温が高い季節は、人だけでなく熱に弱い電子機器にとってもつらい季節です。データ共有やバックアップ用途で常時稼働させ続けることが一般的なNASも、暑さによって熱暴走を起こす恐れがあります。
暑さによるトラブルを防ぐには、事前に対策を済ませておくことが大切です。
ここでは、NASが熱暴走を起こしたり、データが消えたりするのを防ぐために心がけたい使用上の注意点をご紹介します。
1 NASに内蔵されているHDDは熱に弱い?
NASをはじめ、電子機器は基本的には熱に弱いものです。内部の温度が上昇して熱暴走を起こすと、突然電源が落ちる、再起動を繰り返すといった不具合につながる恐れがあります。
放置すると寿命が短くなったり、最悪の場合は発火したりすることもあるため注意が必要です。
特に、NAS内部に搭載されているHDDは、モーターで円盤状のプラッターを物理的に高速回転させることでデータを読み書きするという構造上、発熱が避けられません。
高温状態のまま使用を続けると、ベアリングの摩耗による動作の不安定化、プラッターの傷つきによるデータ消失といった事態に陥る場合もあります。
熱暴走によるトラブルを防ぐために、NASの使用環境を見直すことが大切です。
2 すぐにできるNASの熱暴走対策
NASの熱暴走を防ぐには、使用環境を整える必要があります。ここからは、比較的簡単に行えるNASの熱暴走対策の方法を、3つご紹介します。
2-1 設置場所を変える
NASやパソコンなど、HDDを搭載している機器は、内部の熱を放出するために通気口やファンを備えています。
NASを壁際やホコリっぽい場所に設置すると、通気口が塞がれて熱の放出が妨げられる恐れがあり危険です。
机や壁といった障害物から距離を取ったり、室内を掃除したりして、通気口を塞がないようにしましょう。
また、窓際のように直射日光が当たる場所にNASを設置すると、筐体の温度が上がりやすくなります。
直射日光の当たらない場所に設置することも大切です。
2-2 室温を下げる
NASは24時間365日、連続稼働させるケースが一般的です。ただでさえ内部温度が上がりやすいNASを、室温の高い場所で動かし続けると、内蔵HDDが使用上の限界温度とされる50℃を超える可能性も高くなります。
休日のオフィスといった人がいない部屋は、空調が切られて高温になりやすいので特に注意が必要です。
とはいえ、エアコンを終始動かし続けるのは、電気代などの問題から現実的とはいえません。NAS本体に風が当たるように扇風機を設置したり、専用の冷却シートを取り付けたりといった工夫を行いましょう。
2-3 筐体の掃除を行う
前述のとおり、NASをはじめとした精密機器は動作中に発生する熱を逃がすために、ファンで内部に空気の流れを作っています。
ホコリがたまってファンや通気口が目詰まりを起こすと、空気の流れが弱くなって温度が上昇しやすくなるということです。
定期的にエアダスターで通気口のホコリを吹き飛ばすなど、無理のない範囲で筐体の掃除も行いましょう。
3 NASにトラブルが起きた時の注意点
対策を行っていたとしても、熱暴走によるトラブルを完全に防ぐことはできません。熱暴走などによってNASに何らかのトラブルが発生した際は、すぐに機器の使用を止めましょう。
トラブルが起きたNASに通電を続けると、プラッターに傷がついてデータを取り出せなくなる恐れがあります。
NAS本体の温度を下げようとして、保冷剤や氷の入った袋などを直接当てるのも厳禁です。温度差によって機器内部に結露が発生し、部品が故障する可能性があります。
また、HDDに大きな負荷がかかったり、RAID構成が変わってデータが消えたりする場合があるため、リビルド(再構築)やHDDの入れ替えを行うのも控えた方が良いでしょう。
4 熱で故障したNASはデータ復旧できる?
NASが熱暴走によって故障したとしても、データが完全に消えているとは限りません。対処法を間違えなければ、データを復旧できる可能性は残されています。
データ復旧の可能性を高めるために、基本的には自力で何とかしようと試みるのは控えましょう。
特に、NASは複数のHDDを使ってRAIDを組んでいるケースが多いです。誤った方法でデータを復旧しようとすると、状態が悪化したり、RAIDの構成が崩れたりして、データが完全に取り出せなくなる恐れがあります。
熱暴走が原因で保存していたデータに不具合が起きた際は、データ復旧の専門業者に依頼することをおすすめします。
5 NASは暑さ対策を施しておこう
NASに内蔵されているHDDは熱に弱い精密機器です。発熱によって高温になると、熱暴走を起こしたり、最悪の場合は発火したりする可能性もあります。
発熱をなくすことはできないため、冷却効率を高める、使用環境を見直すといった暑さ対策を行うことが大切です。
ただし、暑さ対策を行っていたとしても、熱暴走などのトラブルが起こる可能性は残ります。
何らかの不具合によってデータが消えたり、読み書きできなくなったりした際は、データ復旧の専門業者に依頼するのがおすすめです。