名古屋工業大学は1949年に設置された国立大学である。前身となる学校の創設から数えて100年以上の歴史を持ち、あらゆる産業部門で活躍する人材を輩出し続けている。また23カ国、50大学等と交流協定を結び、学生や研究者の国際的な交流も積極的に進めている。
工学部機械工学科の藤本研究室はロボット工学を中心に様々なテーマを研究している。藤本英雄教授を筆頭にスタッフ、学生合わせて100人近い規模を誇る。中でも本体に動力を持たずに構造を工夫することで斜面を歩行する「受動歩行」の研究で世界的に高い評価を得ている。さらにロボット技術とセンサや情報処理の技術を組み合わせることで、医療分野を始めとするたくさんの応用研究が行われている。経済産業省が進める「インテリジェント手術機器研究開発プロジェクト」にも参加、脳神経外科用の手術機器を研究、開発している。
また、名古屋市を流れる堀川を参加者自作のロボットで浄化するという「堀川エコロボットコンテスト」を主催し、マスメディアにも取り上げられ注目されている。コンテストには小中学校から企業まで幅広い層から応募があり、学問分野にとどまらない社会と一体となった活動を行っている。
こうした華々しい実績は日々の地道な研究に支えられている。毎日の実験、シミュレーションから生まれるデータは膨大な容量となる。そうして得られた貴重なデータをどうやって保存するかは大きな問題である。そのような研究の現場でロジテックのWindows Storage Server(以下、WSS)搭載NAS「LSV-5S4C」が活用されているという。
名古屋工業大学 大学院工学研究科 おもひ領域 特任助教 山田篤史先生にお話を伺った。
藤本研究室では100を超えるテーマが研究されており、山田先生も複数のテーマを扱っている。中でも大きなウエイトを占めるのはロボットの加速度生成機構と遠隔手術機器のナビゲーションプログラムである。
山田先生の研究するロボットの加速度生成機構とは、帯状弾性体の曲げやねじれ変形を利用した飛び移り座屈を積極的に利用することで、瞬発力を得るという技術である。通常ロボットに瞬間的な動きをさせるためには高加速度を生成する大きな動力が必要となる。この技術を利用すれば、帯状弾性体とそれを変形させる小型モータから構成される簡単な構造で瞬間的な動きを生み出せる。「小型移動ロボットで生物的な動きをさせるための、キーとなりうる技術であると考えています」(山田先生)。
この研究では帯状弾性体の構造解析をコンピュータで行っている。曲げとねじれ変形を伴う飛び移り座屈は3次元の大変形を伴う動きになるため、計算量は膨大になる。最新のPCを使っても丸2日かかるそうだ。そうして計算した結果を動画ファイルとして保存するのだが、これが1秒間あたりのデータ量が約3GBになる。簡単に数十GB単位に達してしまう。
また試作したロボットの動きを動画で撮影することも多い。加速度生成時における帯状弾性体の瞬間的な大変形の映像を記録するため、高速度カメラでの撮影を行う。このデータも必然的に大きくなる。
もう一つの大きなテーマ、経済産業省から受託している手術機器の情報呈示技術の開発とは、手術中に医師をサポートする装置の開発である。近年、発達が著しい内視鏡手術は人体に与えるダメージが少なく、患部をピンポイントで治療できるためメリットが大きいとされている。しかし内視鏡の映像のみでは,医師には取り除くべき腫瘍の位置や現在位置がわかりにくい場合がある。そこで、術前/術中に撮影されたMRI画像をもとにした腫瘍位置や、センサを用いた計測結果,内視鏡先端部の現在位置を術者にわかりやすく呈示するシステムが考えられているのである。いわば「カーナビゲーションシステムの人体版」(山田先生)である。
この装置の開発のために、ときには手術に立ち会って見学することもあるそうだ。しかしそれだけでは限界があるため、参考資料として手術を撮影した動画ファイルを大量に扱う必要がある。
このように山田先生が抱える研究では日々膨大な量のデータを処理しなければならない。長時間にわたる解析の結果や貴重な手術映像など重要度の高いデータばかりである。これらのデータをクライアントPCのハードディスクに保存しておくのは非常にリスクが高い。「こういったデータを安心して貯めておきたい」(山田先生)というニーズが出てきた。
そこでまず山田先生は学内の生協で見つけたLinux搭載NASを使うことにした。これでクライアントの外部にデータが保存できるようになったが、不満も出てきた。
まず起動、終了が遅いこと。使い方によってNASは一度電源を入れたら起動し続けるため、見落とされがちな点だが、山田先生の研究室では重要なポイントだった。まず機器のレイアウト変更を行ったり研究室そのものの移動を行ったりで、NASの電源を落とすことがよくある。その度に起動と終了を待つ時間がもったいないと感じたそうだ。また、当初購入したLinux搭載NASは設定を変更する度に再起動を促され、その都度待たされるのにも悩まされた。
データの転送速度についても不満が出てきた。動画ファイルだと2GBのファイルがいくつもある、というのが当たり前の状況である。ファイルコピーの速度が遅いと長時間待たされた。さらにNASに保存されたデータを整理するためのコピーや移動にも時間がかかった。
そのような状況でロジテックの「LSV-5S4C」シリーズに出会った。導入後、Linux搭載NASと比較してみると違いは歴然だった。
ファイルコピーや終了にかかる時間が2/3に短縮、起動については半分以下の約45%まで短縮された。時間の節約にもなり、操作する度に感じていたストレスが大きく軽減された。
さらにWSSならではのメリットも大きかった。設定の変更時など普段から使い慣れたWindows上の操作ができるので、新たに技術を覚える必要はほとんどない。「本業は研究なので」(山田先生)、NASの設定に手間がかかってしまうのは効率が悪い。
事務的なネットワークやOA機器の設定などは研究室に所属する学生に任せているのだが、専門的な知識を持つ学生が複雑なシステムを使いこなせることがあっても、卒業とともにノウハウが失われてしまう。Windowsであれば、たいていの学生が基礎知識を持っているので、少し慣れれば使いこなすことができる。
さらにオリジナルツールも豊富で、特にフォルダの空き容量を視覚的にまとめてチェックできる“フォルダアナライザ”機能や、NASの状態を把握できる“お知らせメール”機能が「データ管理に非常に役立っています」(山田先生)。
このような使い勝手の良さからロジテックのNASは「研究室の他のスタッフにも勧めやすい」(山田先生)。スタッフは研究で忙しいため、ネットワーク機器などは大学生協で目に付いた製品を導入することが多いという。機器選定に十分な時間を割くことも難しい。しかし、製品そのものの差によって業務や研究の効率が変わってくるのならば、ロジテックのNASは積極的に周りに勧められる製品だと言っていただけた。
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